僕らはみんな、生きている。
 土曜日。

 待ち合わせたファーストフード店で、先に来ていた私を見つけると、ゆかりは右手を上げて微笑んだ。

「ああ、やっぱり」いきなり一言、私の顔を見てそう言った。

「麻美も疲れてるよ。
 いつかこうなるんじゃないかなーって思ってたけど」

 ゆかりとは付き合いが長いから、顔を見ただけでだいたい見抜かれてしまう。

 私は秀司と病院に行ったことを話した。
 
 病名は、言ってはいけないのかな、と思ったけど、それって差別だよな、と思い直し、秀司が統合失調症になったことをゆかりに打ち明けた。
 黙って聞いていたゆかりが口を開いた。

「私よく知らないんだけど、
 なんか気をつけなきゃならないことってある?」

「今までどおり普通に接してくれれば……」

 秀司を怖がったり、避けたりせず、今までと同じように接してくれる人が身近にいる。

 それが秀司にとって、一番大切なこと。

「うん、わかった。……でも」
 目をそらし、言いにくそうにしている。
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