チョコレートトラップ
すれ違う心
まだふわふわとした意識の中、

私はそうっと目を開いた。


一体、どのくらい

眠り続けていたんだろう。


それまであった身体の重みが取れ、

随分と楽に感じる。


柔らかな日差しが

カーテン越しに差し込んで、

心地いい。


もう少しここで横になっていようか、

ともう一度、

目を閉じようとした時だった。


「……気付いたか?」


横たわっている右側から

ふわり優しい声を掛けられ、

私はふとその声の方へ

視線を向けた。


そこには心配そうに私を見つめる、

ウソタの姿があった。


「ウソタ……。もしかして、

 ずっとここにいたの?」


てっきりウソタは私を

保健室へ運んだ後、

みんなのいる体育館へ

帰ったのだと思い込んでいた。


でも、上履きを片方だけ脱ぎ、

その足を膝の上に乗っけた状態で

椅子に深く座っている姿を見る限り、

ウソタは今までずっと

私の側にいてくれていたようだ。






< 236 / 279 >

この作品をシェア

pagetop