クランベールに行ってきます


 しかし、異世界検索の必要がなくなった遺跡の同期を、ただ放置するのはもったいない気もした。夜に同期を迎えるのは明日が最後だ。そこで、結衣はロイドに提案してみた。

「ねぇ。みんなで遺跡が派手に光るところを見物しない? 夜は明日が最後だし。王子様やローザンやブラーヌさんや、みんなで」

 名案だと思ったのに、なぜかロイドは渋い顔をする。

「みんなで?」

 不服そうに問い返すと、ロイドは甘えるように両手で結衣を抱き寄せた。

「二人でいいだろう? 殿下はともかく、ローザンは仕事でもないのに真夜中に呼び出したら気の毒だ」
「それ、今思い付いた口実でしょう?」

 結衣がクスリと笑うと、ロイドは目を細くして反論する。

「おまえ最近、余計な一言が多いな。口実じゃなくて正論だ」
「じゃあ、ブラーヌさんは?」
「あいつは活動期が終わるまで、引き上げてもらう。遺跡の調査を急ぐ必要もなくなったし、何よりあいつの世話で煩わされたくない」
「活動期じゃなくても、ごはんの世話はしなきゃならないじゃない」

 結衣が反論返しを続けていると、ロイドが苛々したように結衣を抱きしめた。

「ニブイ奴だな。あと二日しかないんだ。せっかくヒマになったのに、余計な事で時間を無駄にしたくない」
「うん……」

 結衣はロイドの胸に顔を伏せて、強く抱きしめ返した。
 少しでも長く一緒にいたい。もっと話がしたい。もっと触れ合いたい。ロイドも同じ気持ちだとわかり、胸の奥が暖かくなった。

「もう、一緒に逃げなくていいのよね」
「あぁ」
「じゃあ、もう一言、余計な事言ってもいい?」
「何だ?」

 結衣は顔を上げると、ロイドを見つめ微笑んだ。

「あなたが好き」

 ロイドも微笑み返すと、静かに言う。

「おまえ、今度そういう事言う時は覚悟しろと言っただろう」

 結衣はひるむことなく、宣言する。

「覚悟なら、できてる」

 ロイドは表情を変えることなく、問いかけた。

「いいのか?」
「うん」


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