[修正版]草食系彼氏

 お互いのミーティングが終わり、私達は玄関の階段に座った。夜風が足下をくぐり抜けて、思わず身震いをした。

「来季、寒いね」
「うん」
 来季がポケットからカイロを取り出し、手を温め始めた。
「あっカイロ持ってる。貸してよう」
「ムリ、俺の」
「えー」

 他愛ない話ばかりで返事も素っ気ないけれど、来季といるだけで私は世界で一番幸せになれる。冬空の下でも暖かい気持ちになれる。

「ねえ、貸してー」
「仕方ないな……はい」
「わあ、あったかい……来季、ありがとう」

 でも、楽しい時間はすぐに過ぎてしまう。

「……そろそろ、帰らなきゃね」

 私と来季の帰り道は逆方向だから、ここで別れることになる。

「来季、バイバイ」
「うん」

 私が手を振ると、来季も手を振り返してくれた。前は頷くだけだったのが、今では振り返してくれる。少しずつだけれど、私達も進んでいるのかもしれない。

 明日もきっと、来季に会える。私は来季のことを考えながら、家に向かって歩いた。

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