泣き顔にキス


そばにいてほしいと思う人は皆、あたしから離れていく。

だから、そう願うことも無駄なんだって思うようになったのに。



「…俺はどこにも行かないよ。アスカさんのいない所なんて、行く意味ないから」



あたしの心を読みとったように彼が言った。
だけど、その表情はどこか寂しげに感じる。


“どこにも行かない”

彼は確かにそう言った。


「…どこにも、行かない?」

「うん」

「ここに、いる?」

「…いるよ。だから俺がアスカさんを必要としてるように、アスカさんにも俺が必要だって思ってほしいんだ……」



彼は…あたしが必要だと思ってるの?
必要としてくれているの?

涙がひたすらに溢れる。


…あたしはこんな言葉が欲しかったのかもしれない。


そして、それはまぎれもなく今、この温もりを与えてくれている彼がくれた。


< 27 / 31 >

この作品をシェア

pagetop