御曹司の秘書さんの日常◆

「なぁぁっっ!!!」

武は、びっくりして手帳を落としそうになるが、
すぐにいつもの秘書の顔になる。


あぁー。昴様って…そっち系なのか…?!


「…昴様。手を放してください。
 抱きつかれる意味がわかりません。」

混乱する頭をごまかすかのように、
口調はいつものように冷静。

「くくくっ」

昴は武の耳元で押し殺したように笑う。
そして、
抱きしめていた手を放した。


「やっぱり面白いな武は。
 
 話の最中、あくびをして悪かった。気を悪くさせて、申し訳ない。

 抱きついたのは、そのポーカーフェイスを崩したかっただけ。」


にやりとして、昴は見慣れた名刺を見せた。


「…いつの間に…」

行動を慎めといって取りあげた、
先ほどのかわいい女子社員のアドレスだ。

呆れたように
見つめる武を昴が見つめ返す。


「あっ!!


 悪い… 武ってそっち系?

 ごめんな、むやみに抱きついたりして。」


勘違いするなよ?と極上スマイルで微笑む新しい上司に
武は心から殺意を覚えた。


「!!!!昴さまっ!!」


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