ブルーの住人 

(五)

ではその噂とやらを、女性から聞いたその噂をお聞きいただきましょうか。

老婆の先祖は平家一門の落ち武者で、壇ノ浦の戦いを免れた者なのです。

平家復興の悲願を胸に、相当の軍資金を埋蔵したということです。

そしてその番人たる落ち武者は平家に関わる者であることを隠して、記憶を失った一人の男として村に入りました。

たまたま襲った嵐を利用して、遭難したかの如くに装ったのです。

当初は敬遠していた村人たちも、洞窟に一人暮らしの男が気の毒になりました。

といって痩せた土地柄では潤沢な収穫量があるわけでもなく、遠巻きに見ていることしかできないでいました。

止むなく森で木の実類を集め始めたものの、冬の到来によってそれもままならぬようになっていきます。

次第に痩せ衰えていく男、しかしここで命果つるわけにはいきません。

平家復興という大願があります。

何としても生き延びねばと、村人たちの農作業の手伝いをさせてくれと懇願します。

しかしよそ者を入れるわけにはいきません。

無慈悲なことと思いつつも、冷たく拒否します。

しかしそこで、天は平家を突き放すことはなかったのです。

昨年夫を失い、病に冒されている父親と二人暮しの後家が、この男を夫として迎えると言い出したのです。

「あいの夫になってもらうわの。

そうすればあいも、父の面倒をしっかりとみれるじゃから。

お願いします、皆さん。

世話役さん、皆に了解してもらってくだっせ。」

この申し出に、村中が賛成をしました。

若い働き手が増えることには、誰も否は言いません。

村の血縁者になれば、流れ者とは違うのですから。
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