未熟な恋人


    *   *   *


暁に連れてこられた家は、以前はお母さんの実家だったらしい。

暁の祖父母にあたる人たちは既に他界して、この家は空き家となっていた。

おじいちゃんとおばあちゃんに可愛がられていた暁は、小さな頃よく遊びに来ていたこの家を手放そうとする両親を説得し、改築して自分で住むようになった。

ここに来る途中で買ってきたお弁当を食べながら、私が『結婚した』と誤解してしまった家の事を説明してもらった。

そう言えば高校時代、おじいちゃん、おばあちゃん、と何度となく会話の中に出ていたなと、思い出した。

両親が共働きだった暁には、自宅にいるよりも長い時間を過ごした家だったと思う。

そんな思い出が詰まった家を手放すなんて、暁にはつらくてたまらない事だった。

海外から日本に拠点を戻して活動を始めていた暁は、迷わずにこの家を自分のものにしようと決意。

かなり老朽化が進んでいた家を、改築して

『伊織と再会して、一緒に暮らしたいと願いながら住んでいた』

切なげに、そう教えてくれた。

手元のお弁当は、二人とも箸が進まないのか殆ど減っていないし、高校の頃には私たちの間にはなかったビールもテーブルに置かれているだけで、全く口にしていない。

「伊織を置き去りにして、海外にまで行ってしまって……悪かった。
心も体も傷ついた伊織を見捨てるようなことをして、本当に、申し訳なかった」

二人の間にあるのはただ、過去への謝罪に満ちた重い空気だけ。

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