五章 若い男③
俺は目覚めると携帯を手にした。

しかし沙織からの着信もメールもなかった。

完全に沙織は俺を無視し続けているらしい。
 

俺は微かな希望に掛けてみたが、自分がこうだと決めた事は断固として変えないタイプである沙織に、今更電話やメールを送ってもやはり無駄であったようだ。
 
沙織のことは諦めたくはなかったが、今はそれよりも愛車を修理に出す事が優先だと自分に言い聞かせ、外へ出た。
 
今日の空は昨日の空とは全く正反対で、雲ひとつない青空が広がるまさに晴天であった。太陽が容赦なく照りつける駐車場までの道のりを、額に汗を滲ませながら歩いていった。
 
そして駐車場の前までに来ると、妙な事にパトカーが一台駐車場の入り口のブロック塀付近に停車していた。
 

やじうまがまだ一人も集まっていないと言う事は、ここの駐車場に来たばかりであろうが、一体何かあったのだろうか。少し駆け足で近くに寄ってみる。
 
俺は停車していたパトカーを通過し駐車場に入ろうとした。



その瞬間、俺はとっさに後ろへ素早く後ずさりしてしまった。
< 25 / 46 >

この作品をシェア

pagetop