何時間くらい経っただろうか。

あたりはすっかり暗くなり、時計も次の日の時刻になっていた。
 
浩介はすっかり酔いつぶれ、テーブルの横で大の字になって眠っている。俺は一人、この静まり返った部屋でつまみのチーズを食べながら今自分に起きている出来事を冷静に考えていた。
 

俺はひき逃げをした。飲酒運転をして。だからあんな大きな凹みができた。俺はひき逃げをしたということは俺は人殺しである。

しかし俺はひき逃げした事も、どうして車を運転したかも覚えてはいない。俺は何だか何も見覚えのない罪を誰かに押し付けられ、無我夢中で逃げまとっているしか思えなかった。

未だに、自分が犯罪者で人殺しだなどとは思えなかった。
 
ここもいずれは警察に見つかるだろう。しかしとりあえず、しばらくはこの浩介の家に泊まらせてもらうしかない。もうそれしか今思いつく手立てはない。
 

俺は人生の谷底に突き落とされる寸前まで追い詰められている気がした。
 
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