【密フェチ】雨の夜にキス。
雨の夜にキス。
雨の夜。

車から見える景色は、いつも以上にキレイだった。

雨の雫がネオンの光や、車のヘッドライトに照らされ、夜の街を輝かせている。

「少し、車を停めようか?」

彼の言葉に頷くあたし。

大通りから外れ、車が向かった場所は、海が見える大きな公園だった。

公園といっても、サッカー場ほどの広さがあり、人工芝生が植えられている。

規則的に並べられたオレンジ色の街灯と、遠くに見える夜の街。

「ロマンチック…。さっきまで通ってた街が、まるで宝石みたいに見えるね…」

ワイパーが雫を拭う度に見える景色に、あたしは目を奪われていた。

「本当だな。雨のドライブもいいもんだなって思うよ」

「でしょ?普段はお互い仕事で、なかなかゆっくり会えないから」

あたしがそう言うと、彼はワイパーを止め、エンジンを切った。

「これで、フロントガラスからは何も見えないよ」

彼はそう言い、あたしに優しい笑顔を向ける。

そして、窓を打ち付ける雨音をバックに、あたしたちの唇はゆっくりと重なった。

何度も何度も、重ねては離れ、また重なり合う。

二人の呼吸で、車の窓は雲ってきた。

そんな蒸し暑い車内で、彼はあたしの体に手を回し抱きしめる。

体が汗ばむのは、ここが暑いからじゃない。

雨の打ち付ける音に負けまいと、より一層あたしにキスをし呼吸を乱す彼に、感じてしまっているから。

そしていつの間にか、車内には、あたしたちの荒い息遣いだけが響いていた。

ほら、雨の日のキスはいつもより熱くなって、

そしてフロントガラスを濡らす雨粒が、あたしたちを隠してくれる。

あたしは、分かっていたの。

あなたはきっと、こうすると。

雨の夜なら、こうやって、いつもより熱いキスをしてくれると…。

だから、今夜誘ったのよ。

「止まらない。もっと、キスをしていいか?」

「うん…。して?」

小さく開いた唇に、彼はまた強く自分の唇を重ねる。

こんな風にキスをされたくて…。

雨の夜に、あなたとキスがしたくて…。

こんな夜は、見えない星の代わりに、あなたが星の数ほどのキスをして。

息も出来ないほどのキスを…。

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