雨あがりの空に
「……入院しているとき、何度も思ったの……自分の命が、後…三週間しかないって言われたときね…凄く…ッ悲しかった…だけどね?もし、私の側に裕也と拓海という…存在がなかったら…何も思い残すことなく…死ねるかもしれない……グスッ…ヒック…だけど…だけど…今、私には…大切な家族の存在があるから……死にたくない…ッ…死にたくなんかない……もっと…もっと生きたい…ヒック…裕也と…拓海と笑ってたい…」

翠は、静かに涙を流した。


俺は、無意識のうちに…翠を抱き締めていた。


「…ぇ…ゆう、や?」

翠は驚いていた。

「…ッ…バーカ!翠は死なねぇよ!てか俺が死なせねーし!これから…グスッ…これから、まだまだやることあるんだからさ、そんな悲しいこと言うなよ!…」

俺までも、もらい泣きしてしまった。


涙で言葉が詰まった。


翠は、ゆっくり俺の胸から離れると、俺の顔を覗き込んできた。


「…裕也…」

そっと、指先で俺の涙を拭った。

「…ありがとうね?…今まで…本当に…」

「…何…言ってんだよ…」

「……私、生きるよ!残された時間を…悔いのないように生きてみせる。生きて生きて生きまくってやるんだから!」

翠は、濡れた瞳をゴシゴシと拭くと、笑ってくれた。


「……だけどね?……もし、私が…居なくなってしまったら…そのときは、拓海のことお願いね?…あの子は一人じゃ生きていけないから、裕也が支えていってほしい…」


俺は、何も言わずに…ただただ強く抱き締めた。


この温かい体温を…。

翠の温もりを逃がさないように、強く強く抱き締めた。



辛い、凄く辛い、…だけど…とても温かい夜だった。
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