光の旅人

色とりどりの料理が、食卓を彩りました。新鮮な魚料理はもちろん、野菜も色彩が美しく、スパイスの独特の香りが食欲をそそります。目玉は、鯨のお肉のステーキです。とっても大きくて、おいしそうな焼き色をつけています。皆一同に、食堂に集まり、おいしそうな料理を見てがやがやしていましたが、長老が咳払いをすると、皆静かになりました。
長老が厳かに口を開きます。

「感謝を忘れてはならん。我々は生かされている身だということを忘れてはならん。
この街の住人、そしてオーロラに感謝し、しっかり食べなされ。」

長老のスピーチは、どこか締まりません。でも本当に、街の人々には、感謝してもしきれない思いです。皆、静かに食べ始めました。

こんな豪勢な、そしておいしい食事は久しぶりでした。魚は新鮮でぷりぷりしてて、野菜は瑞々しく、何よりコックさんたちの愛情がたっぷりでした。皆、ペロリと平らげました。
ここしばらく野宿が続いていました。途中いくつか街を通ってきたのですが、そもそも、泊めてもらって、しかも料理まで出してくれるなんていう街はなかなか無いのです。この人数を一晩受け入れるのは、当然のことですが、街にとっても大変なことのようです。それでも別れ際、街の人々は食料といくらかの資金を与えて下さり、そして、街の出口で、私たちの姿が見えなくなるまで、ずっと手を振ってくれているのでした。

「ありがとう」と、通り過ぎていった街の人々が、口を揃えて言うのです。何度も、何度も。私たちも「ありがとう」で応えます。

何度も、何度も。
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