光の旅人
「クルド!」

僕を見つけたカリムが駆け寄ってくる。


「ねぇ、クルド!この前話した新しい小説、ついに書き終えたんだ!読んでみてよ!」

ところどころ破けていて、黒ずんでぼろぼろになったノートを、目をきらきら輝かせて僕の方へ差し出してくる。



彼の小説は面白い、と思う。僕は本を読んだことがない。僕の国語力は「文字が読める」程度。

でも、僕はカリムの小説が好きである。



僕は、自由になりたかった。

ここへ来てからというもの、そう思わない日は無かった。

こんなはずじゃない自分を、もっと輝けるはずの自分を探しに行きたかった。

孤児院の連中に理想を話しても、誰も共感してくれない。
「そんなことできるわけないじゃないか」
彼らの目は、諦めしか映さない。


しかし、カリムの小説には、外の世界へ行きたいというエネルギーが満ち溢れている。夢と希望を語る。


「世界に絶望したあなたも、世界に見放されたあなたも、心から自由を願う私も

見上げる空は、一緒だと信じている」



彼の小説の一節だ。

同じ音が共鳴し、震えるように、彼の発した言葉は、僕の心をひたすら震わせる。

彼が初めて描いた小説を読んでから、僕らは同じ志を持つ親友になった。



同じ空を見上げてるって、僕も信じている。
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