雪月繚乱〜少年博士と醜悪な魔物〜
「なにやらいろいろと、おかしなことを考えているようだが……つまり、その契約というのが成就できれば、お前を喰っていいということだな?」
獲物を見据えるように目を細めた魔物は、見るも妖艶な笑みを浮かべてみせた。
思わず自分が、先刻の獣のように屠られるところを想像し、背筋が冷たくなる。
「や、約束を違うつもりはない。その刻は潔くこの命、くれてやる!」
強気な返答をしながら、内心では血みどろな想像が頭から離れず、月夜は泣きたくなった。
それもこれも、みんな自分が弱いせいだと、くちびるの裏側を噛む。
もし魔物を倒すだけの力があれば、この魔物を逆に支配することもできるはずなのに…。
「そうか。なら、お前にはこれをやる。いまはほとんど妖力を失っているが、俺とはまだ繋がっている。お前の様子はこれを介して見ているからな。これまでのように」
雪から手渡されたのは、目を疑うような小さな姿の精霊だった。
「あ…阿修羅?」
驚いた月夜は、素っ頓狂な声をあげた。
消えてしまったとばかり思っていた阿修羅が、手のひらにのるほど弱々しくはあるが、戻ってきたのだ。
「元に戻るには刻が必要だが、あとはお前のいいように……なんだ、その顔は」
月夜は拗ねたように口を尖らせ、不機嫌な声で唸った。
「無事ならそうと、なぜ教えなかった……」
「無事? それは無事だったのではない。お前があんまり泣きわめくから、俺の中に残っていた魂の欠片を集めて再生させただけだ」
「な、泣きわめいてなんか……!」
と云いかけて、月夜はおとなしくなった。
――いくら泣いたからといって、魔物のくせに…。
「納得したならさっさと帰れ。式ならもうひとついるだろう」
獲物を見据えるように目を細めた魔物は、見るも妖艶な笑みを浮かべてみせた。
思わず自分が、先刻の獣のように屠られるところを想像し、背筋が冷たくなる。
「や、約束を違うつもりはない。その刻は潔くこの命、くれてやる!」
強気な返答をしながら、内心では血みどろな想像が頭から離れず、月夜は泣きたくなった。
それもこれも、みんな自分が弱いせいだと、くちびるの裏側を噛む。
もし魔物を倒すだけの力があれば、この魔物を逆に支配することもできるはずなのに…。
「そうか。なら、お前にはこれをやる。いまはほとんど妖力を失っているが、俺とはまだ繋がっている。お前の様子はこれを介して見ているからな。これまでのように」
雪から手渡されたのは、目を疑うような小さな姿の精霊だった。
「あ…阿修羅?」
驚いた月夜は、素っ頓狂な声をあげた。
消えてしまったとばかり思っていた阿修羅が、手のひらにのるほど弱々しくはあるが、戻ってきたのだ。
「元に戻るには刻が必要だが、あとはお前のいいように……なんだ、その顔は」
月夜は拗ねたように口を尖らせ、不機嫌な声で唸った。
「無事ならそうと、なぜ教えなかった……」
「無事? それは無事だったのではない。お前があんまり泣きわめくから、俺の中に残っていた魂の欠片を集めて再生させただけだ」
「な、泣きわめいてなんか……!」
と云いかけて、月夜はおとなしくなった。
――いくら泣いたからといって、魔物のくせに…。
「納得したならさっさと帰れ。式ならもうひとついるだろう」