雪月繚乱〜少年博士と醜悪な魔物〜
「ああもう…ボクは何をしているんだ」
書物が無造作に積み上げられ、書き終わった計算書の束が机に散乱する。
その上に、月夜は片手をついてうなだれた。
――何がなんだか、頭の中が混乱してる…本当に、疲れ過ぎてるのかもしれない。
集中力が続かず、すべてが終わった刻、すでに月は天上にあった。
しかしたまっていた仕事も、まだ必要のない分まで終わらせてしまった。
しばらくは執務もできない。
月夜は何もすることがなくなり、ただ重いだけの気持ちをもて余す。
「謹慎を無視すれば、十六夜はボクを側使から排除するのかな…」
――いや、月読からも排除されるか?
自嘲ぎみに笑みを浮かべる。
ずるずると脚をひきずりながら、寝室に入った月夜は目を見開いた。
「……阿修羅?」
名前を呼ばれ、パタパタと尻尾が揺れる。
大型犬にまで戻った阿修羅は、変わらず愛くるしい声でナァと啼いた。
「阿修羅っ…よかった、目を醒ましたんだな…阿修羅」
寝台の上にちょこんとお座りする彼を、月夜はたまらず抱きしめた。
ふかふかの毛並みに頬を埋める。
この世界では実体のないはずの精霊に、なんの疑問もなく触れてきたが、こうしているとそんなことは些末に感じてしまう。
――この子はあの男の式だ。どんなからくりかなんて気にしても仕方ない。魔物の力など、おそらくボクの…いや、月読の理解を越えている。
ナァナァと阿修羅の鼻が月夜にこすりつけられた。
その仕草に思わず和む。
「もう、絶対にお前を消させないからな……お前がボクの式だったらよかったのに。闇の式でもかまわない……お前は特別だ」
阿修羅が嬉しそうに喉を鳴らした。
書物が無造作に積み上げられ、書き終わった計算書の束が机に散乱する。
その上に、月夜は片手をついてうなだれた。
――何がなんだか、頭の中が混乱してる…本当に、疲れ過ぎてるのかもしれない。
集中力が続かず、すべてが終わった刻、すでに月は天上にあった。
しかしたまっていた仕事も、まだ必要のない分まで終わらせてしまった。
しばらくは執務もできない。
月夜は何もすることがなくなり、ただ重いだけの気持ちをもて余す。
「謹慎を無視すれば、十六夜はボクを側使から排除するのかな…」
――いや、月読からも排除されるか?
自嘲ぎみに笑みを浮かべる。
ずるずると脚をひきずりながら、寝室に入った月夜は目を見開いた。
「……阿修羅?」
名前を呼ばれ、パタパタと尻尾が揺れる。
大型犬にまで戻った阿修羅は、変わらず愛くるしい声でナァと啼いた。
「阿修羅っ…よかった、目を醒ましたんだな…阿修羅」
寝台の上にちょこんとお座りする彼を、月夜はたまらず抱きしめた。
ふかふかの毛並みに頬を埋める。
この世界では実体のないはずの精霊に、なんの疑問もなく触れてきたが、こうしているとそんなことは些末に感じてしまう。
――この子はあの男の式だ。どんなからくりかなんて気にしても仕方ない。魔物の力など、おそらくボクの…いや、月読の理解を越えている。
ナァナァと阿修羅の鼻が月夜にこすりつけられた。
その仕草に思わず和む。
「もう、絶対にお前を消させないからな……お前がボクの式だったらよかったのに。闇の式でもかまわない……お前は特別だ」
阿修羅が嬉しそうに喉を鳴らした。