卓上彼氏


暗さに目が慣れて、段々あたりの様子がわかってきた。





どうやら今は使われていない遊園地らしい。





「ヨク……どういうこと?」






私がそう言ったのが合図だったかのように、イキナリ園内全ての灯りが着いた。





黄金に光り輝くイルミネーションが私を包む。






目の前の大きなメリーゴーランドは豪華絢爛な装飾を輝かせて回っている。







誰もいない遊園地に、私とヨク、ただ二人だけ。






「綺麗……!!」





私は思わず口を両手で覆った。






それは、今まで見たどんな景色より美しく思えた。







「みかみ………お誕生日おめでとう」





ヨクは大人っぽい表情で笑ってみせた。






「ずっとこのサプライズ、してあげたかった」






ヨクはなんだか照れ臭そうに頭を掻いた。





「初めてデートに行ったとき、映画観てみかみがずっと羨ましがってたから」






「そんな些細なこと覚えててくれたの………?!」






どうしよう、泣きそう……!





あまりの嬉しさに私の目からは幸せの涙が溢れた。






「ははは泣くなって」






「だってっ……こんな幸せ者世界に私だけだよっ………私今……世界中で一番幸せ…!」






私はもう、どうしたらいいか分からないくらい嬉しかった。






誰かにこんなに思われて、こんなに愛されたことなんてなかった。







大好き、大好き。




ヨク、大好きだよ。





「この景色は、みかみだけのもの」





ヨクは真っ直ぐ私だけを見つめた。






そのまま私たちはおとぎ話のような光の世界で、キスをした。









そしてこの日は、私の中で一生忘れない特別な日になった。


< 190 / 221 >

この作品をシェア

pagetop