砂糖菓子より甘い恋【加筆修正ver】
「そうですかね。
 独り者故、私にはまだ分かりかねますが」

 涼しい顔で冷たく応える。

「相変わらずつれないなぁ。
 でも、そうも言ってられなくなると思うけど?」

 何かを隠している風にもったいぶる帝。

「何が?」

「楓……左大臣家の良くできる女房のことだよ……が、街で千にそっくりな少年を拾ったんだって。」

 龍星の顔色が変わるのをみながら、帝はくすくすと笑う。

「あれ?
 心当たりでもあるの?
 すごい美貌を持った少年に。
 龍星がいつまでも独り身なのはそういう趣味だから?」

「帝っ
 言葉をお慎みくださいっ」

 口を開いた言葉は、自分でも想像以上に険しくなっていて慌てて飲み込んだ。
 その様子を御簾越しに見ていた帝は子供のようにはしゃぐ。

「あ、少年の格好をした少女、だったかな?」

 龍星はばさり、と、音を立てて立ち上がった。

「それにしても、本当だったんだ。

 あの子がここに戻ってきているって言う噂も。
 龍星が【誰か】と一緒に暮らしているって言う噂も」

 その帝の剣が籠った言葉には一切耳を貸すこともなく、龍星は急いで出て行った。
< 102 / 463 >

この作品をシェア

pagetop