砂糖菓子より甘い恋【加筆修正ver】
 いかに嘆き悲しんでいても、当たり前のように夜は来る。



「真竜」

 闇に沈み、静まりかえった京の都で、少年は一人彷徨い真竜を探す。
 何度も何度もその名を呼ぶ。


「太一」

 闇の中から名前を呼ばれ、泣き疲れた毬は弾かれたように顔をあげた。
 昼間と同じ屈託ない笑顔で、真竜が手を差し伸べる。

 太一は手を伸ばしかけて、恐る恐る引っ込めた。


「止めとくよ。また、真竜が倒れたら困るから」

「太一のせいじゃないよ。でも、ま、いっか。行こうぜ」

 二人は深夜の京の街を風のように駆け抜けて、馬舍へ向かった。
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