砂糖菓子より甘い恋【加筆修正ver】
三の一
 蛍の季節は緩やかに過ぎ去り、都に夏が訪れた。


 みん みん みん

 賑やかな蝉の声で、余計に暑さが増す。

「毬様、お加減は如何ですか?」

 京の端にある破れ屋敷――陰陽師 安倍龍星の屋敷――の一室で、の次女毬姫が力なく臥せっていた。

 心配そうに様子を見に来た見目麗しい女房は、名を華と言い、実は人でなく『華の精』を擬人化させたものであるが、そこらの女房よりずっと良く働く。

 その華が、毬の頭に載せてある濡れ手拭いをそっと取り換えた。

「ごめんね、華」

 普段、同世代の少年並に野山を駆け巡るじゃじゃ馬姫が、今は糸のようにか細い声で謝った。


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