砂糖菓子より甘い恋【加筆修正ver】
 嫌だわ……と、滴る血液を見ながら、毬は思う。

 お伽噺に出てくるお姫様なら、そろそろ気絶しても良い頃合いだ。
 どうして、自分は正気を保ったままなのかしら。

 雅之は、困り顔で少し離れたところから心配そうに毬の様子を伺っていた。
 とても、先ほど、自分に迫ってきた男と同一人物だとは思えない。


「……いつ、来られたの、ですか?」

 警戒心を微塵も解かずに唇を開く。
 かすれた声は、自分のものとは思えないほどみじめに震えていた。

「ここに入れたのはつい先ほど。
 屋敷全体が封印してあったので、それを解くのに手間取っていた」

「……ふう、いん?」

 耳慣れない言葉に、聞き返す。

「屋敷の周りに護符が貼ってあって、その中の世界を異空間に閉じ込めておくようなものだ。いや、詳しいことは俺にもわからぬが」

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