砂糖菓子より甘い恋【加筆修正ver】
「毬」

 再度、囁くように甘く、龍星が呼びかける。


 普段の龍星しか知らないものが見たら……というか、龍星と取り立てて親しい雅之から見ても……想像が出来ないほどの柔らかい口調。

 そもそも、「龍星の膝枕で眠る」なんていう状況を見たら、都のどれほどの女性が卒倒するだろうか。
 惚れた腫れたに疎い雅之にさえ、龍星の人気度合いが優れていることは分かる。

 都随一の力を持つ陰陽師。
 帝にさえ媚びない、凛とした態度。
 見るものの視線を釘付けにする、整った容姿。
 未だ浮いた話が一つもないことも、魅力の一つだった。


 龍星は杯を置いて、毬を抱き上げた。

 雅之は目を見張る。
 この屋敷では、龍星が手を叩けば、何者かが彼女を運んでくれる。

 酒の準備さえ自分でしない龍星が、自ら女性を抱き上げるなんて、これはもう前代未聞の大事件だ。

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