ミックス・コーヒー
「貴之、どう? おれが切ったんだよ」
 尚樹が、嬉しそうに声を弾ませる。

 彼は大きな体格だが、手先が器用で細かい作業が得意だ。
 中でも散髪は、貴之も時々頼む程の腕前である。


「アナタ、ジョウズ。トテモ」


 ふと、か細い、淡々とした声が聞こえた。

 消えそうだが、消えそうにない。
 透き通しそうで、何も通しそうにない。
 御主人に似て、不思議な声だった。


 少しして、貴之は我に返る。

「……えっ、カタコト?」

 貴之は、改めてその短い文章とイントネーションに驚いて、声の持ち主である彼女を二度見した。
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