ミックス・コーヒー
「ミクリ、今日何時から仕事だっけ?」

「今日は夕方からだよ」
 ミクリが、ご飯を口に含みながら答える。

「そっかあ。店も定休日だしな。じゃあ、それまでどうする?」

「美葉んとこ行く」

「ていうか、貴之んちだからね」と、尚樹が笑う。

 ミクリも、笑う。

 そのミクリの口元についているおかしな物を、尚樹は見つけてしまった。

「ミクリ、米ついてる」
 ミクリが恥ずかしがったりする間も与えずに、尚樹は彼女の口元から白い米粒を指で拭い取ると、素早く自分の口に入れた。

「あ! 食べた」
 ミクリが声を上げる。

 尚樹はきょとん、とした。

 それは、尚樹にとってはごく自然に出来た行動だったので、どうしてミクリが驚いているのかさえ一瞬わからなかった。
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