ミックス・コーヒー
「川村にはその宝物を<探し出す>必要があった。彼には、放火してその場所を燃やしてしまうことはできなかったんです。たとえ依頼人からの要望だったとしても」

「なぜだ?」
 不自然に落ち着いた様子で、河内が貴之に聞き返す。

「その探し物は依頼人にとって<宝物>なんかではなく、<消し去ってしまわなければならない物>だったんです。そして、どうやら川村はその物を見つけて、依頼人を脅迫しようとしていたようです。
探し物は、川村にとっての<宝物>だったんです。それを探し出す前に家を燃やしてしまうことは考えられない」

「君の言うことはなんとなくわかったが、決定的に足りない部分がある。
まずその<宝物>がなんであるか、ということと、今の話が私と一体何の関係があるのか、ということだ」

 河内が、冷たい視線を貴之に浴びせる。
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