ミックス・コーヒー
「果たして本当にそれが、川村という男が探していた物なのか? 探していた場所と全く別の所から出て来たそれを、そうだとどうして言い切れる?」

「河内さん、話をはぐらかさないでください」

 尚樹が強い口調で言い放つ。

「今、問題なのは<探し物>の正体よりも、この手紙の内容です。
この手紙は、あなたが古亭路美鈴さんを暴行し、そして脅迫していた、という証拠です」

「……本当に私がそれを書いた、という証拠はあるのか?」

「筆跡鑑定をすれば、簡単にそれは証明されます」

 ガサガサ、と木々の葉が擦れ合う音がした。
 風が強くなったようだ。
 先程は冷たいと思ったそれを、今度は生温く感じ、貴之は無意識に苛立ちを覚えた。
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