ミックス・コーヒー

ピンクの毛布の女の子

   ①

『チャッチャ、チャチャッチャチャッチャ……』

 突然鳴り出した音に反応し、布団の中で何かがうごめく。
 やがて、布団の隙間からその手が、そして上半身が顔を出した。

 先程の音はいわゆる着メロだ。
<彼>は、電話そのものがあまり好きではないが、着メロを大ファンのひょっこりひょうたん島のテーマにすることによって、いくらか気分を紛らわしている。

 とはいえ、寝起きの苛立ちはさすがのひょうたん島でも癒せないようだ。

「………」
 一応、彼は「もしもし」とでも言ったつもりなのかもしれない。
 いや、やっぱりこの電話の相手を考えると、それはなかった。

『あ、もしもし。貴之?』

 その相手は、慣れたように彼に……<貴之>に、勝手に話しかけた。

 貴之は、さも面倒そうに答える。

「……ああ。何」

『今からそっちに行くからさ、おまえ、お湯沸かしといてくれないか』

「はっ?」
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