モントリヒト城の吸血鬼①~ヴァンパイアの花嫁~

趣味の時間―ノークス

趣味のチェスに興じていた
ノークスは、姫乃が厨房で
呼んでいるという黎明の伝言を
受けて、しばらく迷った末、
しぶしぶ部屋を出た。

このあいだのように、
また窓から侵入されては
たまらない。

厨房に向かいながら、
ノークスはここ最近のことを
思い起こす。

この半月、姫乃は見事に
ノークスを振り回してくれた。

正直に言って、凍夜より
手のかかる人間など
この世にいるわけがない、と
思っていたのに、姫乃は
その結論をたった半月で覆した。

姫乃は基本的に素直な人間だ。

性格自体もまぁ、そう悪くはないし、
割と温厚な人柄なのだと思う。

しかし、問題はあの異常なまでの
好奇心と行動力だ。

彼女は、目を離しても
見張っていても、事あるごとに
何かしら騒動を起こす。

厨房のある階下へ向かう
ノークスの脳裏に、ここ数日の
騒動が思い起こされる。
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