モントリヒト城の吸血鬼①~ヴァンパイアの花嫁~
「…。」

凍夜が無言で足を止めた。
その顔に、微かな
不快さが浮かぶ。

「ここが、入口らしいね。」

そういって、森全体を
見回す。

「…ええ。ここから、
妙な力が影響して
我々を拒むのです。」

落ち着き払った凍夜の
態度とは裏腹に、
ノークスの苛立ちは
募るばかりだ。

「どうするのですか。
キミがのんびりしている間に、
姫乃は我々の手中から
逃げてしまった。」

「…。」

ノークスが苛立ち紛れに
詰っても、特に慌てる
様子もない。

「待つよ。」

「は?」

「彼女が出てくるまで。」

「な、に…を、
バカなことを…。」

自分を守ってくれる
住処から、そう簡単に
出てくるわけがないだろう。

…いや、この森に
ノークスたちが入れない
ことを姫乃は知らないのだから、
そうとは限らないのだろうか?
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