モントリヒト城の吸血鬼①～ヴァンパイアの花嫁～

密談―ノークス

密談を交わす男たちに
見つかりそうになった
沙羅の口を抑え抱え
込んだまま、ノークスは
音を立てずに隣の部屋へ
忍び込んだ。

隣室の男たちが、
聞きつけた物音を白猫の
ものと思い込み室内に
戻ったのを確認して、
壁際に座り腕の中の
沙羅を覗き込む。

「…。」

言葉もなく、血の気の
ひいた顔で呆然としている
沙羅が気の毒に思えて、
ノークスは落ち着かせる
ように沙羅の頭を
優しくなでた。

あの男たちの話は、
沙羅にとって相当
ショックが大きかったの
だろう。

沙羅の頭を撫でながら、
ノークスは彼女の耳を
ふさいでしまおうかと
少し迷った。

このまま、年端も
いかない少女に刺激の
強い話を聞かせるのは
忍びない。

本来なら、沙羅を
連れてすぐにこの場を
立ち去りたいところだ。

しかし、話題が
姫乃の事である以上、
ノークスは彼らの
話からできるだけ
情報を集めておく
必要がある。