モントリヒト城の吸血鬼①~ヴァンパイアの花嫁~
目を開ければ、目の
前には慌てて顔を
遠ざける姫乃がいる。

…口付けられた?

そう思って姫乃を
見上げれば、姫乃は
今にも卒倒しそうな
ほどうろたえ、顔を
真っ赤に染めて
視線をそらした。

「…やあ。」

「あ、え、ええ…。」

目も合わせられないほど
狼狽している姫乃に、
つとめて何事もなかった
かのようにふるまう。

「少し、寝すぎた。
もう少し早く起こして
くれてもよかったのに。」

「あ、の、気持ち
良さそうに、
寝ていたから…。」

「まぁいいや。
…本、読み終わったの。」

「え、えぇ。」

「どれがよかった?」

「…忍びよる悪意。」

「そう。」

じっと、姫乃の横顔を
見つめる。
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