モントリヒト城の吸血鬼①~ヴァンパイアの花嫁~
一瞬、凍夜が何か言いたそうに
口を開いたが、その口から
こぼれたのはため息だけだった。

ノークスが牙を立てたのと
反対の腕を軽く持ち上げ、
ためらいなく牙を立てる。

「っ!!」

姫乃が息をのんだ。

厳しい表情でその腕に
噛みつく凍夜を見る。

凍夜も牙を立てながら、
上目づかいで姫乃を見たが、
すぐに視線を外した。

痛みの為だろう。

姫乃の目にうっすらと
涙が浮かぶ。

まるで子供の嫌がらせの
ように、凍夜はわざと
痛みを与えるような
噛み方をしたのだ。

そんな真似をしておきながら、
ほとんど時間をあけず、
凍夜は姫乃の腕を放した。
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