モントリヒト城の吸血鬼①~ヴァンパイアの花嫁~
「…朔夜様…あの人たち
…地主さまの…。」

沙羅たちを囲う
喰血鬼たちの幾人かの顔は、
地主のもとで下男として
雇われていた
男のものだった。

その中には、以前何度か
言葉を交わし、沙羅を
気遣ってくれた
あの猫が苦手な
男の顔もある。

青ざめる沙羅に、
気の毒そうな面持ちで
朔夜は呟く。

「ああなっては、
もう助かりません。」

「そんな…。」

「全員、動いているだけの
死体にすぎない。
空腹で人を襲う前に
壊さなければ。」

朔夜は自身の腕を
傷つけて、血をこぼす。

その血が、足元の猫たちに
降りかかると同時に、
二匹の姿は深紅の
液体に変わった。

朔夜の血を取り込み、
混ざりあい、ゆらりと
人の形を作る。
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