モントリヒト城の吸血鬼①~ヴァンパイアの花嫁~
「…ノークスを、
許してあげて。」

従僕が、吸血鬼の
分身というのなら。

姫乃と凍夜のそばで
安心しきって眠る
天明の姿こそ、
ノークスの本心
なのではないだろうか。

「あなたのそばに、
いたいのよ。」

彼はきっと、
理由がなければ、
そばにいては
いけないのだと
思い込んでいる。

「たった二人きりの
家族が、理由がなきゃ
そばにいちゃいけない
なんてこと、
あるはずないわ。」

姫乃と沙羅が
お互いを支え合って
生きてきたように、
凍夜とノークスだって
それぞれに支えられ
救われた部分が
あるはずだから。




決して、片方だけが
寄り掛かって
生きてきたわけが
ないのだ。



凍夜にとっても
ノークスは失うことの
できない大事な弟で
あることを、どうか、
ノークスが気付き
ますように。



そう、姫乃は、
雲間からのぞく
月に願った。
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