モントリヒト城の吸血鬼①~ヴァンパイアの花嫁~

花嫁という契約―姫乃

昼食の後。

たっぷりと薔薇の
ポプリを浮かべた
お湯で温まった
姫乃を迎えたのは、
東雲と天明の
二人だけだった。

「…珍しく、昼間に
お風呂に入ったら?
…なんて言うから
どうしたのかと
思ったら、
こういうことね…。」


約一名、いるはずの
人物が、いない。


ほんのりと薔薇の
香りを漂わせながら、
姫乃は仁王立ちで
腕を組み、二人の
従僕をねめつけた。

二人は姫乃の目の前に
並んで正座をして、
気まずそうに沈黙している。

「それで?わざわざ
お風呂に時間を
かけるように
花風呂の準備までさせて、
凍夜はどこに行ったの、
東雲。」

姫乃の質問に、東雲は
視線をそらして答えた。
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