モントリヒト城の吸血鬼①~ヴァンパイアの花嫁~
「…あと、お義兄さまと
一緒にいたずらして、
おいしくない料理を
食べさせたのも、
ごめんなさい。」

これも素直に
謝っておく。

「…いいえ、
許しません。」

「…。」

やっぱり、
なかなおりなんて、
凍夜が言うほど
簡単にはできない
らしい。

それでもあきらめずに
謝ろうとした
沙羅の口に、
香ばしいものが
入ってきた。

「…。…っ!!!」

反射的に数回咀嚼して、
それがなにか悟る。

「僕はちゃんと
飲み込みましたからね。
キミも、ちゃんと
飲み込みなさい。」

そう言って
水の入ったコップを
差し出された。

やはり、沙羅の
作ったミートパイの
破壊力は微塵も
衰えていない。

そんなことを思いつつ、
泣きそうになりながら
どうにか口のなかの
ものを胃まで押し込んで
一息ついた沙羅を、
朔夜はそっと抱き寄せた。
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