モントリヒト城の吸血鬼①~ヴァンパイアの花嫁~

忍び寄る危機―沙羅

「…これで、全部…。」

小さな不燃布のカバンに
最小限の荷物を
詰め込んで、沙羅は
小さく息をついた。


今夜は、赤い月夜だ。


吸血鬼の結界は
赤い月の夜に
その効力を失うため、
その都度はりなおす
必要があるという。

そして、一度結界をはり
終えれば次の赤い
月夜まで結界が消える
ことはないから、今夜
沙羅をモントリヒト城に
迎えると、凍夜と朔夜が
それぞれ教えてくれた。


やっと。


やっと、沙羅は
大好きな姉と再び
暮らせるようになる。


それを考えるだけで、
沙羅の顔には自然と
笑みがこぼれた。

それに、これからは
朔夜と一緒に
いられることも、
とてもうれしい。
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