モントリヒト城の吸血鬼①~ヴァンパイアの花嫁~
「…。…こっちが先だね。」

ぽつりと呟き、
喰血鬼とその奥の
男を睨みつける。

「ひっ…!」

微動だにしない
喰血鬼とは対照的に、
男は露骨に恐怖の色を
顔に浮かべた。

「凍夜、姫乃は!?」

後から付いてきていた
ノークスがようやく
追いついて近づいて
くるのを視界にとらえる。

「森の中。」

短く必要な言葉だけ
告げれば、一瞬だけ
凍夜と視線を交わして、
ノークスはためらう
ことなく燃え盛る
森へ向かって
駆けだした。
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