モントリヒト城の吸血鬼①~ヴァンパイアの花嫁~
「待ちなさい!」

「きゃあっ!!」

逃すまいとしたノークスが
伸ばした手が、辛うじて
姫乃の髪の先をつかんだ。

痛みで悲鳴を上げた姫乃は、
それでも必死に逃げようとする。

抵抗する姫乃の目に、
しかめっ面で事態を
静観していた凍夜の姿が映った。

その傍らにある漆黒の剣が
目に留まる。


手を伸ばせば、届く距離。


「っ!離して!!」

掴んだ剣で狙いを定めて
勢いよく薙ぐとふわりと
身体が軽くなった。

「な、にを…!」

ノークスが驚きの声を上げる。

横目に、凍夜が酷く驚いた顔で
姫乃を凝視しているのが見えた。
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