モントリヒト城の吸血鬼①~ヴァンパイアの花嫁~
涙が、こぼれる。

「…凍夜…。」

かつて窮地を共にした
親友でもなく、
頼りに思っていた
亡き両親でもなく、
最愛の妹でもなく。


その名を呼ぶ。


彼がそばにいて
くれたなら。


死を迎えることだって、
きっと怖くないのに。

「…凍夜…。」

「どうせ呼ぶなら、
もう少し必死な方が、
いじらしくて好きだね。」

「…。…え?」

涙でゆがんだ視界に
何か黒い影が動いた。
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