モントリヒト城の吸血鬼①~ヴァンパイアの花嫁~
「…ねぇ。これ、
どっちが美味いの。」

問いかけられた姫乃…の
くるまった塊がびくりと震える。

「月の宴(ルナー・シチーリ)と
海の舞踏(モーレ・ブーリ)。」

あの塊の中からはさすがに
見えないだろうと酒瓶に
ついている銘柄を
読み上げるが、姫乃は
何も答えない。

机の上に氷を用意した
従僕を再び剣の姿に戻して
別の棚に置くと、二本とも
持って椅子に座り、
じっと酒のラベルを眺める。

色から判断すれば、おそらく、
琥珀色の月の宴は普通の
地酒だろう。

しかし、海の舞踏の方は
酒にしては変わった色をしている。

そう、姫乃の瞳と同じ、
深い深い海の色。

こんな紺碧の酒は、
長く生きているが見たことがない。
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