モントリヒト城の吸血鬼①~ヴァンパイアの花嫁~
「最後まで一緒に
いてくれることだけだよ。
…僕がキミに望むことは、
それだけだ。」

往生際の悪い姫乃に、
たったひとつの
願いを伝える。

「…花嫁に…僕の
ものに、なって。」

最後のひと押しに、
姫乃は少しの間目を
閉じてから、
覚悟を決めたように
静かに口を開いた。

「…至らない、
わたしで良ければ。
慎みと貞節をもって、
生涯を供に致します。」



それは、この国で
プロポーズをうける
女性が返す言葉だった。

優しく抱きしめて、
からかう。

「キミでも、そういう
受け答えの仕方は
知ってるんだね。」

「…あなた、わたしを
なんだと思ってるの…。」

少し膨れた姫乃を
笑ってベットの上に
横たえる。

東雲が人の姿になって、
白い布に包ませた
姫乃の腕を置いて
部屋から出て行った。
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