モントリヒト城の吸血鬼①~ヴァンパイアの花嫁~
「…姫乃。」

何度目かわからない
呼び声に、どうにか
視線だけで応える。

姫乃はこんなにも乱されて
翻弄されっぱなしだと
いうのに、凍夜が
涼しい顔でいるのが悔しい。

そう思うと、今にも
はじけてどこかに
飛んで行ってしまいそうな
意識が、辛うじて留まった。

「その顔はなに。」

喘ぎ声とキスで文句の
言えない口の代わりに
表情で語ってしまったらしい。

少し不満そうな凍夜は、
ようやく姫乃を
愛でる手を緩めた。

「…なんでも…ない…。」

「何でもなさそうには
見えないよ。」

すっかり弱いと知られて
しまった耳と、
あふれてこぼれて
しまいそうなほど潤った
太ももの奥とを
同時に責められて、
姫乃は悲鳴を上げた。
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