モントリヒト城の吸血鬼①~ヴァンパイアの花嫁~
ノークスが姫乃を見る目が、
ときどき異常な嫌悪感を
含んでいることは気付いていた。

姫乃の確信めいた言葉に、
凍夜がため息をつく。

「ノークスは、キミに
よくにた顔の女に、
恨みがある。
キミはただの身代わり。」

淡々と告げられて、
姫乃はあっけにとられた。

「は…えぇ?」

「キミが苦しむと
よく似た顔の彼女に
復讐した気になるらしい。」

そんな理由で、わたしは
ここに連れてこられたの?

あまりにも不当な理由に、
不愉快さが顔に出てしまう姫乃に、
凍夜は思いついたように付け加えた。

「でも、キミと彼女は
性格がちがいすぎるけれどね。
…もしかすると、キミが
たっぷり彼を振り回せば、
キミと彼女が別人にしか
見えなくなって、身代わりに
するのをあきらめるかもしれない。」
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