小さな恋の虹〜キミと描く夢〜


『歌恋』


あたしの名前を呼ぶ、圭の声も聞こえる。


フワフワの茶髪を潮風に靡かせ、伸びてきた前髪の奥で、二重の目を細めてあたしを見ている。


何もしなくても、彼の隣にいれた日々。


毎日毎日、どんなときでも、あたしの隣に圭はいた。


それが当たり前だった。


その当たり前が当たり前じゃなくなった時、ぽっかり心に穴が開いて抜けがら状態になってしまうのは、あたしの経験がまだまだ少ない証拠だ。


「………」


どうしよう……

ここまで来て、あたし、躊躇ってる。


圭に会うのが怖い。


圭との思い出がいっぱい詰まったこの島に帰ってきたら、余計に怖くなった。


「あれ? 歌恋ちゃん?」


不意に背後から女の人に名前を呼ばれ、あたしはビックリして勢いよく振り返る。


「やっぱり!」


「おばさん!!」



< 472 / 495 >

この作品をシェア

pagetop