光のもとでⅠ
「……つまり、誰かを選んで好きになることもあるのかもしれないけれど、私にはきっとそういうのは無理で、たぶん気づいたら好きになってるって感じだと思うの。だから……相手が誰かは好きになってみないとわからないし……えぇと……だから、しょうがない……かな?」
 唯兄は絶句したまま私を見ていた。
「……どうして黙るの? 私、何か間違ってる?」
 こんな唯兄を見てしまうと、自分が口にしたことに自信が持てなくなる。
「間違ってるっていうか……一般論から外れてる」
 一般論――それはなんとなく苦手な言葉。
「唯兄、持論を展開してもよろしいでしょうか」
「ぜひとも聞かせていただきたい」
「一般論がすべてだったら、自分だけの特別はなかなか見つけられないと思う。自分にとっての特別は、私は自分で決めたい。……私は"一般的"とか"普通"って呼ばれるものからは外れてると思う。だって、私みたいな体調の人には今まで出逢ったことがないもの……。そう考えるとね、私は世間一般に混ざるのはとても難しいの」
 健康な同級生の中に混ざることができないのは粗方理解している。
 今の高校では友達がいるけれど、私は到底その人たちの基準値には満たない分野がある。
 だとしたら、自分の基準値を見つけるしかなくて、そこをプラスマイナスゼロ値にするしかない。
 人とは比べられない。比べたら、私は卑屈になる。
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