光のもとでⅠ
「キスマーク」
 悪びれることなく答える。
「ほほぉ……十七歳の悩める乙女というわけだね?」
 美鳥さんは笑みを深め、ターゲットを海斗に絞った。
「相手は付き合っている人かい?」
「秋兄。一応、昨日から彼氏みたいだけど」
「ふむふむ……。秋斗氏と翠葉嬢ならば年の差は九つ。それにキスマークか……これは面白い」
 怪しく目を光らせ、口もとに笑みを浮かべる。
「ところで、キスマークはどこについているのだろう?」
 隠すことを諦めたらしい御園生さんが口を開いた。「首の後ろです」と。
「そうか……。やはり私が行こうっ!」
 美鳥さんはすくっと立ち上がった。
 ここまできてしまうと、反対する人間は誰もいなかった。
 もっとも、誰かがやらなくてはいけない役だが、誰もがやりづらい役で……。
 もし誰かが行くことになるなら、その役はきっと栞さんに割り振られていただろう。
 その栞さんですら、「どうしようかしら……」と言う程度には、今の翠には踏み込みづらいものがあった。
 まずい局面には美鳥さんのようなイレギュラーがいたほうがいいのかもしれない。
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