光のもとでⅠ
 ふと携帯を見た瞬間に着信があった。
 ディスプレイには崎本美波と表示されている。
「はい、湊です」
『湊ちゃん、擦過傷の手当てなんだけど……』
「擦過傷?」
『うん。水で洗ったら――』
「シート貼るだけです」
『了解。湿潤療法でいいのよね?』
「誰か怪我でもしました?」
『それはあとで……』
 そう言うと通話は切れた。
「……拓斗か?」
 まぁ、初等部って言ったら怪我をよくする盛りよね。
 海斗もよく怪我をしてはお母様に手当てをされていたっけ……。
 年が経つにつれて、その役割は司がするようになっていたけど。
 そんな小さい頃を思い出すと少し心があたたかくなった。
 私たち姉弟と従弟は本当の姉弟のように育ってきた。
 従弟という関係であっても、一般的に言われる従弟とははるかに強いつながりだと思う。
 だからこそ、何かあれば心配も大きくなるというもの。
「……こんなことでくたばってるんじゃないわよ」
 従弟に思いを馳せ、保健室をあとにした。
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