光のもとでⅠ
 よって、今朝の接触が偶然だったとしても、その場で家庭教師の話を持ち出し、期末から見てほしいと口にするのは確約破りになる。
 それは互いが席に着いたあの日に納得済みだったはず。
 柏木桜、慈恵女学院の一年。
 この学校は世間一般の金持ちが通うお嬢様学校だ。
 金さえ積めば必ず入れるという噂もある。
 ゆえに、学力レベルの高低差が激しく、入学試験によりクラス分けが徹底されているという。
 俺が普段勉強を見る相手は海斗と翠。
 ふたりは素地がきちんとしているから教えることに苦痛を覚えたことはないが、柏木桜はどうだろうか……。
 俺は堪忍袋をいくつ用意すれば事足りるのか。そのほうが心配だ。
 期末考査からなんて冗談じゃない。
 夏休みならば出された課題を適当に見ればいいが、期末考査ともなれば対策を練る必要が出てくる。
 興味の欠片もない人間にそこまで時間や労力を割く気は毛頭ない――。
 そんなことをつらつらと考えながら学校へ向かい、部活の準備をした。
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