光のもとでⅠ
「気持ちが追いつかなかったのね」
 そんなことしか言ってあげられなかった。
 もともと線の細かった翠葉を抱きしめると、さらに華奢になってしまったことがわかる。
 それだけでも切ない気持ちでいっぱいになるのに、こんな傷まで作って――。
 肩口で翠葉がすすり泣く。
「翠葉……ごめん。キスマーク付けられたからって嬉しいとは限らないよね」
 飛鳥がしゅんとした顔で言うと、
「小説の中だと女の子は喜んでいるのに、どうして私は違うんだろうってずっと考えていて、でもまだ答えは出ないの……。私、今は恋愛無理なのかも……」
 その言葉を聞き終わると翠葉から離れた。
「どうして?」
 と、佐野が訊く。
 佐野だけじゃない。
 私も飛鳥も海斗も、この部屋にいる翠葉以外の人間は皆そう思っただろう。
「余裕がないの。今は体調を安定させて学校に通いたい。そのふたつで精一杯。それ以上は許容できそうにないの」
 佐野は「そっか」とすぐに納得したけど、私はどうしてか納得できなかった。
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